オウム真理教は、「ポア」という名のもとに、多くの殺人を犯した。
そして、教祖と実行犯である信者たちの死刑が執行された。
しかし、そもそも「ポア」というのは、どういうものなのなのか。
彼らは、その考えをどこから持ってきたのか。
オウムは、もともとヨガの教室である「オウムの会」から、「オウム神仙の会」、「オウム真理教」と姿を変えている。
そして、宗教団体としてのオウム真理教の元ネタ本と言われるのが、『虹の階梯』という書物である。
この本は、チベット仏教ニンマ派の僧(ラマ)であるケツン・サンポ・リンポチェと、人類学者・宗教学者である中沢新一による共著である。
内容としては、師であるケツン・サンポが、弟子の中沢新一に密教の口頭伝授を行ったものの記録となっている。
そして、この本には、「ポワ 意識を移し変える身体技法」という章が載せられている。
(以下、引用は『虹の階梯 − チベット密教の瞑想修行』ラマ・ケツン・サンポ、中沢新一共著 平河出版社 1981年による。)
そこには、ポワとはどういうものかについて、以下のような記述がある。
ポワ('pho-ba)は、たとえいつ死が訪れても動ずることなく、確実に心(意識)を身体からぬきだして、より高い状態へと移し変えるための身体技法 P280
また、ポワには五種類のものがあるとされ、その五つ目には、「死者のポワ」というものが挙げられている。
五番目は「死者のポワ」である。人の臨終まぎわ、死者の意識を追いかけ、つかまえて、悪い生存の状態におちこまないようにするポワである。P282
つまり、チベット仏教におけるポワというのは、「死に際して本人の魂を救う」ということが目的とされていると見ることができる。
この後、書籍には、「どのようにしてポワを行うか」の手順が記されており、それは一種の儀式のようなものと思っていただければよいかと思う。
信者ではない目からみれば、ポワ(の儀式)は、死んだ人間のためのものであるというより、残された者たちが「死者の魂は救われたのだ」と思い、安寧を得るために存在するもののように見える。
いずれにしてもオウムは、このチベット仏教におけるポワを曲解し、「人を殺してその魂を救う」という意味と捉え、自らに不都合な存在を排除する目的で、殺害するに及んだものと考えることができる。
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